「哲学」の視点から見た「働く意味」とは!人はなぜ働くの?2人の哲学者から学ぶこと!!

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人はなぜ働くの?歴史的な哲学者が語る「哲学」の視点から見た「働く意味」とは!?

なぜ働くのか「働く意味」について考えたことはありますか?

働く意味は人それぞれで、個々の視点や価値観によって様々な答えが出てくると思います。

そんな、働く意味のような「人によって答えが変わりそうなモノ」に対して有効的なのが哲学です。

哲学は、異なる立場や意見と向き合い、共通の理解を築く上で有効的な手段として、過去に多くの哲学者が「働く意味」について考察してきました。

そして、そんな多くの哲学者が様々な提唱をしている中で、「働く意味」について共通的な内容がありました。

それは「労働は個々の目標や価値観の追求を支えるための手段である」ということです。

  • 自分の才能や能力を伸ばし、発揮したい。
  • 社会的な役割や責任を果たし、認められたい。
  • 他者との協力や共感を持って有効な人間関係を構築したい。

もちろん、経済的な安定を確保するという部分も認めつつも、個人の成長や才能の発揮、社会への貢献を可能にする手段でもあると言っているのです。

この記事では、歴史上の哲学者が労働に対してどのように考えていたかを簡潔に紹介していこうと思います。

ぜひ最後まで読んでみてください。

 

哲学者から学ぶ「労働」について

まず、哲学について簡単に紹介すると、哲学のゴールは「問題を明確にする」ことです

特に、人によって答えが異なりそうなモノに対して有効で、哲学者のルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、哲学についてこう説明しています。

  • 哲学の目的は思考の論理的明晰化である。
  • 哲学は学説ではなく活動である。
  • 哲学の仕事の本質は解明することにある。
  • 哲学の成果は「哲学的命題」ではない。諸命題の明確化である。
  • 思考は、そのままではいわば不透明でぼやけている。哲学はそれを明晰にし、限界をはっきりさせねばならない。

出典:「論理哲学論考」岩波文庫、51頁

この記事では、哲学者がどのような背景や考察からその結論に至ったのか、簡潔に紹介していきますが「結論だけ知りたい!」という人は、太字の部分だけでも大体の内容がわかるように紹介していきますので、太字の部分だけ読み進めてください。

 

哲学者マルクス:「人」と「動物」の違い

哲学者マルクスは、労働についてこのように述べています。

 

  • 「人間は労働をする動物」
  • 「労働が人たらしめている」

マルクスは、動物と人間の違いを「労働すること」と捉え、労働こそが人間の本質であるとしています。

例えば、クモが糸を出す、蜂が蜜を集めるなどの行為は、その動物の本能や習慣であり、そこに意識はありません。

しかし、人が行う労働は必ず「目的ある行動」を取ります。

働くという行為は、「誰かの役に立つという目的」を達成した時に「対価」を得る仕組みになっているからです。

また、労働に対して、「人間が自己を実現し、人格を成長させる重要な手段である」とし、正当な生命活動であるとも述べています。

しかし、彼は労働に対して単に賞賛しているわけではなく、資本主義制度下で労働者が搾取されることへの問題についても提唱しています。

 

  • 生産手段が資本家に集中し、労働者が資本家に依存する
  • 資本家は、労働者に支払った賃金以上の利益を得ることが出来る

資本主義化において、剰余価値の生産方法を資本家が握ることで、労働者は常に失業の脅威と隣り合わせになります。

結果、競争の厳しい市場環境においてコスト縮減を図る際、「賃金はできるだけ低く」、更に「労働者に対して強い交渉力を持たせない」ことから、賃金の低下と長時間労働に繋がるのです。

 

その他にもマルクスは、労働力の二面性についても主張しています。

 

  • 労働力は商品として市場で取引される
  • 労働者は商品ではなく人であり尊厳を持っている

つまり、労働者が自己を売り渡す一方で、生活を維持するために働かざるを得ないという矛盾を抱えているのです。

マルクスは労働に対して「肯定的な一面」と「労働者の搾取」を厳しく批判しながらも、労働者の尊厳の回復と平等な社会を築くために社会の変革を提唱しました。

 

哲学者スヴェンセン:人生における労働の比重

 

次に、近年の労働についても触れている、哲学者スヴェンセンの著書「働くことの哲学」についてみてみましょう。

スヴェンセンは著書「働くことの哲学」の中で、仕事に対して様々な側面から否定と肯定を行い「仕事が自分の人生のなかでどれほどの重みをもつのかを見積もる作業を、けっして怠ってはならない」と述べています。

では、スヴェンセンが実際にどのような視点で、その人生における労働の比重を確認しているのかについて、いくつか紹介していこうと思います。

哲学者スヴェンセンは「人生において幸福を得るための唯一の方法が労働であれば、仕事は重要な役割を占めるが、幸福になるのに必要なものは仕事だけではない」としています。

この考え方は、労働は必要なものと位置付けつつも、「人生=労働≠幸せ」でありながらも、天職に生きるのか、余暇に生きるのか、を問いかけたものでもあります。

生きる意味と労働の関係性については、この記事でも詳しく紹介しているので、あわせて読んでみてください。

 

また、賃金と幸福度の関係についても触れられていて、「仕事が与えてくれる高給と満足度の相関は、決して自明とは言えないとし、仕事をするのに給料は最大の関心事ではあるが、必須の条件ではない」とも述べられています。

実際に、年収と幸福度の関係性を調べた調査について見てみると、このような結果が出ています。

この表は、2019年5月に内閣府が発表した『満足度・生活の質に関する調査』に関する第1次報告書から引用したものですが、ここで見て欲しいポイントは、世帯年収による幸せ(幸福度)は「2,000万~3,000万円未満」の「6.84ポイント」をピークに上がらなくなることです。

そればかりか、ピークを超えると年収が上がっても幸福度は下がっていきます。

このような視点から労働について考えてみると、「お金を稼ぐことだけを目的とした労働」についても、少し考えさせられる部分があるのではないでしょうか。

 

その他にも、労働によってこそ自分らしさを発見できるという考え方を元に「自分探し」の傾向を利用し企業の利益追求とぴったり調和するように誘導しようとしている会社の出現、仕事の「生産プロセス」自体が労働者の消費の対象となりつつも、消費対象が私たちを満足させるものではなければあっさり捨て去るように、仕事も同様にすぐに会社を辞めるようになった」など、近年の労働環境において書かれていてます。

ここで紹介したのは、ごく一部になりますが、このようにスヴェンセンの「働くことの哲学」には、仕事に対して様々な側面から、仕事が自分の人生のなかでどれほどの重みをのかを見積もるための、様々な考察が書かれています。

もし、自分の働く意味について更に深く考察したいと思っている人は参考になると思うので、ぜひ一度読んでみてください。


 

近代労働のあり方について

近代労働のあり方について

最後に、労働において哲学的に見るため、切っても切り離すことが出来ない「時代による労働観の移り代わり」と、そこから見えてくる「現代の労働における問題点」についてまとめておこうと思います。

 

時代による労働観の移り代わり

仕事の意味、目的、役割は劇的に変化してきました。

西洋社会の代表的な思想と労働観について簡単にまとめるとこのようになります。

時代 思想と労働観
古代 肉体的活動を伴う労苦
中世、初期近代 宗教に基づく労働の普及
近代 成功のための手段
現代 自己表現の手段、承認欲求を満たす手段

では、それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

古代

古代では、労働は社会の底辺として奴隷が行うものとして位置付けられ、余暇などの自由な時間に高い価値を置いていました。

しかし、その中でも農業を労働とは捉えておらず、祈りや儀式の延長である呪術的な生産活動として考えていました。

 

中世、初期近代

続いて、中世や初期近代になると都市化が進み、産業労働が発展と共に「労働は人々が怠惰な方向に流れることを防ぐ救済である」という見方が広がりました。

キリスト教の宗教倫理と結びつくことで、労働は重要な宗教活動となったのです。

 

近代

更に近代まで時代が進むと、途中から金銭を追い求めることに否定的であった従来のキリスト教的価値観は薄れ、宗教的な意味付けは徐々に無くなっていきました。

ここまで進むと皆さんの知る、産業革命と資本主義経済の確立により、労働に対する考えは「成功を目指すための手段」として、多くの人々が経済的成功を求めるようになったのです。

 

現代

そして、現代に繋がるのですが、現在における労働は「細分化」と「簡素化」により、ほとんどの仕事が単純労働に代わりつつあります。

そこで問題になってくるのが、労働者の価値低下による長時間の労働、賃金の低下、などの労働環境の悪化、更には人間を労働力という商品として消費する環境の構築です。

 

現代の労働における問題点

現状、労働力の不足により「労働者の価値低下」は抑えられていますが、この傾向は年々進むと予想されます。

そのため、今後自分の市場価値の低下を抑えるためにも、常に学び、新しいことを取り入れる姿勢がとても重要になってきます。

また近年では、労働の価値観の変化として「周りの評価や社会的ステータスが高い大企業で働きたい」といった、承認欲求と自己表現を労働のモチベーションにするといった行動も多々見受けられ、労働観も年々変化しています。

それに合わせて労働環境悪化の対策として、ライフワークバランス「働き方改革」が話題になり、前までの長期労働やサービス残業が美徳とされていましたが、今では労働者が求める働き方として、労働者のニーズに合わせた働き方を取り入れた会社も多くなってきました。

このように、労働観も労働環境も年々変わりつつあります。

今後も時代の流れを受け、労働観と労働環境は年々変わっていくと思いますが、これからのキャリアを考える上で、自分が本当はが「何のために働きたいのか」といった「働く意味」を考えることはとても重要なテーマになってきます。

もし、「働く意味」についてもう少し詳しく見てみたいという人は、下にリンクを貼っておきます。

 

労働観について見直すきっかけとして、ぜひあわせて読んでみてください。

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